みなさんは「かんたろう」と聞いて何を思い浮かべますか?
筆者は「北風小僧のかんたろう」を思い浮かべます。他にも調べたらゆるきゃらにも「かんたろう」っているみたいですね。勉強になりました。
筆者が以前住んでいた地域・・・というか幼稚園の周囲には、春から梅雨時期にかけて、よく姿を現す「かんたろう」がいました。時には幼稚園内に侵入してくることもしばしば・・・ですが、その姿を見ると子ども達も大盛り上がりなんです。いい意味でも悪い意味でも。
さて、そんな「かんたろう」ですが、今回紹介するものは苦手な方もいるかもしれません。少し閲覧を気を付けてくださいね。
※この記事はプロモーションを含みます。
かんたろうとは?(写真注意)
こちらです。この写真は以前筆者が撮ったものですが、中央部に青くきらめく細長い生き物がいるのにお気づきでしょうか?この生き物こそ、
「かんたろう」です。
筆者も初めて見た時にはビビり散らかしました笑
かんたろうについて
かんたろうは学名で「シーボルトミミズ」と呼ばれる、山に住むミミズの仲間です。私が住んでいた地域では、「シーボルトミミズ」とは呼ばれず、通称「かんたろう」でした。むしろ地域のみなさん、「かんたろう」と言えば通じるけれど、「シーボルトミミズ」と言ってもなんのこっちゃ分からないって方が多かった印象です。
ちなみにかんたろうはめっちゃでかいんです。日本最大のミミズで、体長は小さいものでも横向きのA4用紙くらいあります。(ちなみにかんたろうではないのですが、同じくらいでかいピンク色のミミズも同じ地域には生息されていらっしゃいます)
また、色も独特ですよね。畑や花壇でよく見かけるミミズといえばピンクっぽい色をしているものが多いですが、かんたろうは青色です。しかも不思議な艶があり、かんたろうが歩いているとキラキラと不思議に光ります。面白いですよね。
シーボルトミミズは日本の固有種でもあり、世界的に見ても貴重な生き物なんですよ。
雨が降ると出てきます
出典:Wikipediaより
冒頭でもお伝えした通り、筆者が以前勤めていた幼稚園は山の中にあり、かんたろうの姿をよく見かけていたのですが、特によく見られる季節があります。それは春から梅雨にかけての時期です。
特に、雨が降った後はすごいんです。道のあちらでもこちらでもなんなら幼稚園の園庭にもかんたろうが出てきます。それも大量に。なんかもうびっくりするくらい。苦手な人は道歩くのも躊躇するレベルで出てきます。
で、なぜ雨が降った後に出てくるのか。これは諸説ありますが、普段は山の地中に住んでいるかんたろうですが、雨が大量に降ることにより地中に水が溜まってしまいますよね。水がたまると息も吸えなくなっておぼれてしまうので、あわてて地中から出てくるという説と、あとはかんたろうにはお見合いの周期が2,3年ごとにあり、その時期に合わせて地中から大量に出てくるという説があります。
それでまあ本当に大量に出てきますので、やはり子ども達も色々と思うわけです。
「きもちわるい!」「こわい!」と。
また、「かんたろうは触るとおしっこをひっかけくる」や、「毒があるから近寄るな」という大人の声もよく聞きました。(実際には毒は持ちません)
ただ、かんたろうも同じ山に住んでいて、時々姿を現すのにも彼らなりの理由があるわけですし、大切な自然の命でもあるわけです。ですので、かんたろうのことを子ども達にどう伝えるのがよいのか、これまで繰り返し考えてきました。
かんたろうを使って子どもに山の成り立ちを伝える
山には様々な生き物が住んでいます。シカ、イノシシ、ウサギ、タヌキ、アナグマ・・・ほかにもたくさんの虫たちや植物など。命の数は数え切れません。そんな山には森があります。森はたくさんの木々によって作られるものですが、この木々の足元には地面がありますよね。その地面が栄養豊富で豊かな土ではなかったらどうでしょうか。きっと木々は枯れ、森がなくなり、そこに住む多くの生き物たちが死んでしまうかもしれません。
そこで出てくるのがかんたろうです。かんたろうは所謂分解者と呼ばれる立ち位置にいる生き物です。木々が落とす葉や、腐った実などはかんたろうのごはんになります。そしてその食べたものがかんたろうのうんちとして排泄されると、それは栄養満点の土へと還ります。雄大な山の木々がどっしりと根を張るための豊かな土壌をかんたろう達は作ってくれているんですね。
また、かんたろう自身が他の生き物の捕食対象となることもあります。体の動きが遅く、大きくて高たんぱくなので狙われやすいのかもしれません。イノシシなどは掘り起こして食べることもあるようです。貴重な森の生き物達のごはんにもなるのですね。
さて、ではそんなかんたろうがいなくなってしまえば森はどうなるでしょうか。山の土壌を耕す生き物が減り、土壌の栄養も不足していきます。また、他の生き物たちのごはんとして果たしている役割もなくなってしまい、飢える生き物も出てくるかもしれません。そうなってしまうとその自然環境そのものが存続することができない環境へとなってしまうかもしれません。
蚊などはよく絶滅したら生態系が壊れるなどという話はよく聞きますよね。かんたろうも同じです。見た目だけで嫌悪感を抱いて忌避してしまう人も多いかもしれませんが、彼らがいないと山は成り立っていないのです。
つまり彼らは縁の下の力持ちなんです。かんたろうすげェ!
というようなことを簡単に子ども達に説明します。年中、年長さんくらいならなんとなく分かってくれます。なんとなくその存在のことを知ると、それに対しての怖さとか嫌悪感って薄れますよね。知らないから怖いんです。怖いから「キモイ」やらなんやら攻撃的な言葉が飛び交うんです。少しでも対象に対して知っていると、実際に目の前にいても怖い気持ちは薄れるものです。多分。
そんなことを子ども達に伝えながら、毎年のかんたろうシーズンを乗り切っていました。
みみずのかんたろう(絵本)
出典:たじま ゆきひこ くもん出版
もっと子ども達に身近な存在として伝える方法として、絵本もあります。こちらの絵本は絵に迫力があり、山の生き物たちが鮮やかに描かれています。
こちらのお話ではまさにかんたろうが主人公として描かれているのですが、かんたろうはその風貌から、山の生き物たちに忌み嫌われることもあります。特にダンゴムシの家族と、ネムの花は深くかんたろうを傷つける言葉を発します。読んでいて思わず私自身も身を縮めてしまいそうになるほどの。なんというか、まるで人間のいじめや差別そのものを表現しているようです。
作中にはかんたろうを傷つけるものだけではなく、優しく諭してくれたり、挨拶をしてくれたりする生き物たちもいます。その中でもハサミムシのおじさんは人格者で、かんたろうと一緒に山の生き物たちを眺めて、
ーみんなが それぞれ、 ちがった すがたで、 いろんなことを するから、
やまの なかが たのしいのさ
出典:「みみずのかんたろう」
とかんたろうを励ます言葉を伝えてくれます。ハサミムシのイケオジィ!と目頭が熱くなってしまいますね。(この後ネムの花のあんちくしょうのせいで気分が台無しにされるのですが)
この絵本は見た目だけで物事を考えたり決めつけたりしてしまう、人間の浅はかさを教えてくれるような道徳的な物語でもあります。最近自分の中で話題になっている人種差別に通ずるものもあるかな、とも思います。興味があったら是非読んでみてくださいね。
最後に
今回は日本の山に住む大きなミミズ、かんたろうについて取り上げてみました。
なかなか町で生活していると存在すら知ることもない生き物ですが、住んでいる地域によっては意外と身近な生き物であったりします。
そして実際にその現場には、子ども達に自然のことを伝えるヒントが転がっています。その姿を見て「きもーい」で終わらせるのではなく、その生き物の背景をどのように伝えるのか。そこもまた大人の腕の見せ所なのではないでしょうか。
みなさんも山でかんたろうをみかけた時には、そっと見守ってあげてくださいね。
コメント